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    2022/01/13

    Covid-19で重要性アップ、英文契約書でよく見る不可抗力条項

    1 問題となる事例

     2020年から続く新型コロナウイルスの感染拡大。デルタ株の感染もようやく落ち着いたかと思ったら今度はオミクロン株。欧州ではロックダウンを行う国も出ており、国際取引においても状況の変化に注視しなければいけない状況が続いています。
     国際取引において不測の事態が生じた場合に使用する条項の一つに不可抗力条項(Force Majeure)があります。不可抗力条項は国内取引の契約書においても用いますが、国際取引において特に重要となります。問題となるのは、例えば以下のような場面です。

    日本企業X社は、B国のY社から部品を仕入れる契約を締結していました。しかし、B国にあるY社の工場でクラスターが発生し、工場を一時閉鎖せざるを得なくなったため、当該部品の製造オペレーションに遅滞が生じ、Y社はX社に対し部品を予定通り納入できませんでした。X社はY社に対し契約違反による契約解除を求めたり、これによりX社が被った損害の賠償を求めることができるでしょうか。

    2 X社の担当者が行うべきこと

     あなたがX社の担当者であったと仮定した場合、まず行っていただきたいのは、Y社との間の取引契約書を見て、不可抗力条項(Force Majeure)の有無を確認していただくことです。不可抗力条項(Force Majeure)とは、天変地異、自然災害、戦争、革命、内乱、テロ等、当事者がコントロールできない事由により債務の履行が不可能となった場合に、免責を認める条項です。例えば以下のような文面になっています。

    No Party shall be liable in any manner for failure or delay of performance of all or a part of this Agreement, except for the obligation to make payment, due to acts of God, governmental orders or restrictions, strikes or other labor disturbances, riots, embargoes, revolution, wars (declared or undeclared), sabotage, fires, floods or any other causes or circumstances beyond the control of the parties.

    いずれの当事者も、天変地異、政府の命令もしくは制限、ストライキもしくはその他の労働争議、暴動、通商禁止、革命、戦争(宣戦布告の有無を問わない)、妨害破壊行為、火災、洪水、または両当事者の支配を超えるその他の事由もしくは状況に起因する本契約の全部または一部の不履行または履行遅延については、支払義務を除き、一切責任を負わないものとする。


    3 不可抗力条項があった場合

    (1)不可抗力事由の検討

     契約書に不可抗力条項があった場合、次は、どのような事象が不可抗力事由として定められているかを確認してください。本件では、“pandemics”(感染の蔓延) “epidemics”(流行病) “ outbreaks of disease”(病気の発生) “global health emergency”(世界的健康危機)等があれば、文言的には含まれる可能性が高そうです。また、” any other causes or circumstances beyond the control of the parties”(当事者のコントロールを超えた事由)などの包括条項がある場合も、文言的には含まれる可能性が高いといえます。

     このように書くと、免責が認められてしまい、X社担当者としては諦めざるを得ないように思えますが、実は必ずしもそうではありません。2022年1月現在、新型コロナウイルスの感染拡大が始まってからほぼ2年が経過しようとしています。仮にY社の工場で換気やソーシャルディスタンスなど適切なクラスター対策が取られていなかった場合には、不可抗力事由の発生にY社自らが寄与していたと判断され、免責が認められない可能性もあります。また、Y社として工場内でクラスターが発生する可能性が予見可能で、製品在庫を一定抱えておくべきだったといえる場合には、Y社の工場内でのクラスター発生という不可抗力と、製品を納入できない債務不履行との間の因果関係がないと判断され、免責は認められない場合もあり得ます。

    (2)報告義務・損害軽減努力義務の確認

     不可抗力条項の中には、不可抗力事由が生じたことを相手方に通知する義務や、損害を軽減するよう努力する義務が定められていることもあります。例えば、以下のようなものです。

    The Party confronted with such delay or failure due to the events set forth above shall give notice to the other as soon as possible and shall exert its reasonable effort to remove the causes or circumstances of nonperformance or delay with all possible dispatch.

    上記の事由により当該遅延または不履行に直面した当事者は、できる限り速やかに相手方当事者に通知するものとし、すべての可能な発送において不履行または遅延の原因または状況を除去するために合理的な努力を尽くすものとする。


     契約書の内容を確認する際には、不可抗力事由だけでなく、このような定めがないかも確認する必要があります。そして、自らが不可抗力を主張する側であればこれらの付随義務も果たすように注意しましょう。他方、自らが不可抗力を主張される側であれば、相手がこれらの付随義務を果たしているかを確認し、相手に違反がある場合には、ケースバイケースで、是正を求めたり、責任を追及することを検討しましょう。

    (3)解除権等の確認

     不可抗力条項の中には、どのような場合に契約解除ができるか等を定めていることもあります。例えば、以下のようなものです。

    On the occurrence of Force Majeure, the terms and conditions of the Agreement may be amended or terminated by separate agreement by the parties.

    不可抗力が発生した場合、本契約の条件は、両当事者が別途合意することにより修正または終了することができる。


     上記の例は、不可抗力事由が生じた際に当事者双方が協議の上、契約解除等ができるというものですが、一定期間経っても不可抗力事由が解消されない場合などに、当事者の一方が契約を解除できるようにすることもあります。また、契約解除の他にも、独占権を付与している場合でも他者からも調達できるようにするなど、様々な内容を定めることがあります。

    4 不可抗力条項がなかった場合

    (1)準拠法条項の確認

     契約書に不可抗力条項がなかった場合は、準拠法条項(Governing Law)を確認してください。準拠法条項(Governing Law)とは、その契約を解釈する際にどの国の法律に従うかを定める条項です。日本国内の取引であれば、当事者双方が当然日本法だと考えているのであえて記載しないこともありますが、国際契約の場合には定めることが必須の条項です。例えば以下のような文面になっています。

    The validity, construction and performance of this Agreement shall be governed and construed in all respects by laws of Japan.

    本契約の有効性、解釈および履行は、すべての点において日本法に準拠し、解釈されるものとする。

    (2)準拠法によって免責されるかを検討

    今回の設例で準拠法がB国法だったとしましょう。この場合には、B国法の内容を調べ、不可抗力条項がない場合でもB国の法律上免責される可能性があるかを検討する必要があります。

     一般的には、英米法系(例えば、ニューヨーク州法、英国法、シンガポール法などコモンロー)の場合は、不可抗力条項がない限り免責されないことが多いといわれています。他方、大陸法系(例えば、日本法、中国法、フランス法などシビルロー)の場合は、各国の法律にもよりますが、不可抗力条項がなくても免責される可能性がある場合がより多いといわれています。

     例えば日本法の場合、民法上「債務者の責に帰することができない事由」による場合、債務不履行責任を負わないと定められているため(第415条1項但書)、今回のようなケースではこれに該当することもあります。もっとも、この際にも、Y社の工場内で適切なクラスター対策が取られていなかった場合や、工場内でクラスターが発生する可能性が予見でき、一定の製品在庫を抱えておくべきだった場合には、責任は免れないと考えます。

     なお、「外国の法律をどのように調べたらよいのか」と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが、渉外業務を行っている弁護士であれば、自ら一定の調査を行ったり、自身のネットワークを利用して問題となっている国の弁護士にリサーチを依頼することが可能です。当事務所でもこれらの対応を行っておりますので、必要な際にはご依頼ください。

    5 まとめ

     不可抗力条項(Force Majeure)は、新型コロナウイルス感染拡大以外にも、地震等の自然災害など様々な場面で問題となるものです。近時では、地球温暖化により、かつてなかったような災害が増えており、不可抗力条項の重要性は以前にも増して高まっています。実際、新型コロナウイルス感染拡大以降、様々なリスクに備え、既存の英文契約書の見直しをしたいというご依頼は増えています。取引先との関係でも、契約書の見直しを打診することが不自然でない環境になっているともいえますので、この機会に、重要な契約書の内容の再点検をされると有益であると思います。
    以上