インコタームズとは
貿易取引の場合には、商品の価格を決める際に、国際輸送費、保険料、通関費用なども加味して決める必要があります。この輸送費、保険料、通関費用などの費用の負担についてのルールを決めているのがインコタームズです。インコタームズはもう一つ重要なことを決めており、それが、輸送中の貨物の危険の負担です。たとえば、輸送中に船が沈んで商品が滅失又は毀損してしまった場合に、どちらがそのリスクを負担するのかということについて、インコタームズはルールを設定しています。
具体的なルールの例
インコタームズのルールは、FOB、CFRなど、アルファベット3文字で書かれています。例えば、FOBとうものがありますが、これはFree On Board の略称で、日本語では「本船渡し」といいます。これは、売主が、売主の国の港で船に商品を積み込むまでの費用を負担し、危険も船の上で移転する、というルールです。例えば、売主は栃木の企業、買主はシンガポールの企業、商品は横浜港からシンガポールの港まで船で送るとします。このとき、FOBであれば、栃木の企業は、横浜港で、船に荷物を積むわけですが、栃木の企業が負担する費用は、船に商品を上げるまでの、栃木から横浜までのトラックの輸送費、輸出通関費用などに限られます。船の輸送費、シンガポールについてから商品を保管する倉庫代、輸入通関費用、シンガポール国内のトラック輸送費などは全てシンガポールの企業が負担することになります。危険も本船に商品をあげた時点で栃木の企業からシンガポールの企業に引き渡されますので、もし輸送中に船が沈むなどの事故があった場合には、その危険はシンガポールの企業が負担することになり、つまり、シンガポールの企業は商品がなくても、商品代金を支払わなければならなくなります。
商品価格の提示の際にも役に立つ
外国の買主に対し商品の価格を提示する際にも、FOBでいくら、というように提示します。インコタームズは貿易商人の方の間の共通言語ですから、相手がどこの国の企業であっても、FOBといっただけで、商品価格にどこまでの費用が含まれているのか、危険がどこで移転するのか、すぐに分かり便利なのです。
インコタームズを使う上での注意点
インコタームズは国際商業会議所というところが作った国際的な規則で、法律ではないので、当然に適用されることはありません。インコタームズを使いたければ、契約でそのように記載する必要があります。また、インコタームズには、先程紹介したFOBも含め11個の規則がありますので、それぞれの内容をよく理解し、自分の希望にあったものを選ぶ必要があります。また、インコタームズを使う際には、FOB横浜、CFRシンガポールなど、指定する場所や港を正確に記載する必要があります。
先程のFOBでいうと、どこの港までの費用が含まれているのか、横浜なのか、神戸なのか、というのは、大きな違いになるので、これを正確に記載する必要があります。