コラムcolumn

2017/06/27

レター形式の英文契約書

レター形式の契約書とは

契約書の形式の一つで、手紙のような形式をとった契約書をいいます。契約書というと、冒頭に売買契約書、などと契約書名が書かれており、最後に両当事者がサインする形式のものを思い浮かべる方が多いと思いますが、英文契約書には、レターの形式のものもあります。レター形式というのは、まさにレターの形式で、例えば、雇用契約書だとすると、会社から従業員へあてた手紙のような形になっています。従業員の住所がかいてあり、Dear Sir、というような形で本文が始まります。レターといっても、末尾には、会社の代表者のサインがあり、従業員も内容を了承した旨のサインをするようになっています。

レター形式の法的効力

これは日本でもそうですが、契約書の形式で法的効力が決まるわけではありません。レター形式の契約書が法的拘束力を持つか、つまり、サインをした当事者がそれに拘束されるものなのかどうかは、契約書の記載内容によります。注意していただきたいのは、レターなので拘束力がない、拘束力が弱い、というものではないということです。レターの形式なので、末尾のサインは、受領しましたという意味かと勘違いをして、サインをしてしまうと、それに拘束されることになってしまうこともあります。

レター形式の契約書を作成する場合

決まりがあるわけではないのですが、比較的定型的な、雇用契約書、秘密保持契約書、コンサルティング契約書などにレター形式が用いられることが多いといえます。逆に複雑な内容の業務提携契約書、M&Aの契約書などは、通常の契約書の形式を用いることが多いです。

それともうひとつ、複雑な内容の契約で、契約の条件の交渉に時間がかかる、最初から全てを決めるのは困難だったり適切でない、というときには、契約の大枠が決まった段階で、それを確認するLetter of Intent という仮の合意書を作ることもあります。Letter of Intentは仮合意書、基本合意書などと訳しますが、レター・オブ・インテントとそのままカタカナでいうことも最近は多いです。Intentは意図という意味ですので、当事者の意図を確認するための契約書、ということになります。Letter of Intentは国際取引の世界ではよく出てきますし、レター形式の契約書の代表格なので、ぜひ覚えておいてください。

レター・オブ・インテント

本契約の前の合意のレターというと、簡単な数枚のものをイメージされるかもしれませんが、案件によっては10枚以上になり、レター・オブ・インテントを作るためだけに双方の弁護士で何回も何回も協議し、ほとんど本契約書同様の作業が必要になるケースもあります。レター・オブ・インテントに法的拘束力を付けるか否かはこれも当事者の意思次第なので、そもそも拘束力をもたせるかどうか、持たせるとしたらどの条文に持たせるのかは、協議して決める必要があります。また、これとほぼ同じものとして、Memorandum of Agreementや覚書、というものをつくることもあります。LOIとMOAは名前は別ですが機能はほぼ一緒なので、合わせて覚えておいてください。