商標とは
商標とは、事業者が、自分(自己)の取り扱う商品・サービスを他人(他社)のものと区別するために使用するマークです。
私たちは、商品を購入したりサービスを利用したりするとき、企業のマークや商品・サービスのネーミングである「商標」を一つの目印として選んでいます。そして、事業者が営業努力によって商品やサービスに対する消費者の信用を積み重ねることにより、商標に「信頼がおける」「安心して買える」といったブランドイメージがついていきます。例えば、クロネコヤマトの黒い猫の看板を見て、クロネコヤマトだから安心だろうと思い荷物を送るわけです。
このような、商品やサービスに付ける「マーク」や「ネーミング」を財産として守るのが「商標権」という知的財産権です。商標権を取得するためは、特許庁へ商標を出願して商標登録を受けることが必要です。
例えば、「スカイベリー」は、栃木県によって商標登録されています。スカイベリーという商標を第三者が栃木県の許可なく使用することは、商標権の侵害にあたり認められません。
スカイベリーという商標を車につけられる?
商標権は、マークと、そのマークを使用する商品・サービスの組合せで一つの権利となっています。
商標登録出願を行う際には、「商標登録を受けようとする商標」とともに、その商標を使用する「商品」又は「サービス」を指定し、商標登録願に記載することになります。商標法では、サービスのことを「役務(えきむ)」といい、指定した商品を「指定商品」、指定した役務を「指定役務」といいます。この指定商品・指定役務によって、権利の範囲が決まります。また、指定商品・指定役務を記載する際には、あわせて「区分」も記載する必要があります。「区分」とは、商品・役務を一定の基準によってカテゴリー分けしたもので、第1類~第45類まであります。
スカイベリーの場合には、野菜,果実,種子類,苗について登録がされており、他にも、冷凍果実,加工野菜及び加工果実、茶,菓子及びパン,穀物の加工品、ビール,清涼飲料,果実飲料,乳清飲料、日本酒、洋酒、果実酒、乳製品、その他にもいくつかの商品を権利の範囲として登録されています。これは、スカイベリーの果実や苗はもちろんのこと、その加工食品まで幅広く商標権が及ぶようカバーするためです。
しかし、車は権利の範囲に含まれていませんので、第三者がスカイベリーという車を売り出したとしても、商標権の侵害にはならないことになります。
もし自分の商標が侵害されていたら?
自分の商標が侵害されていた場合、商標権に基づき、第三者に対し、侵害行為等の差止めを求めること、損害賠償を請求すること、不当利得の返還を請求すること、信用回復のための措置等を求めることが可能で、これとは別に、刑事事件となれば裁判の結果、刑事罰の適用もありえます。
まずは、ご自分の商標が登録されていることをご確認ください。登録されていないと、商標法による保護は受けられません。もっとも、商標登録をしておらず、商標法による保護が受けられなくても、一定の条件を満たす場合には、不正競争防止法という法律により保護を受けられる可能性があります。商品の周知性や類似性という条件が必要になりますので、慎重に検討した上での判断が求められます。
日本で登録した商標は外国でも有効か
日本で登録した商標が保護されるのは日本国内だけです。よって、中国で第三者がいちごについてスカイベリーという商標を登録することはできる可能性があります。現実に、中国では、南部鉄器、九谷焼など、日本の有名伝統工芸品の名前が商標登録されてしまい問題となっています。一度登録されてしまうと、この商標を買い取ったり、中国の特許庁に該当する省庁に無効宣言の請求をしたりする必要があります。したがって、商品を輸出したい国、商品の製造拠点がある国などでは、日本同様に商標登録をすること検討する必要があります。外国で商標登録というと大変そうに思われるかもしれませんが、マドリッド・プロトコルという、日本の特許庁を窓口とし、日本での商標出願又は商標登録を基礎にして、一度に複数の外国(締約国・加盟国)へ出願することができる制度があり、数多く利用されています。