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    2021/10/20

    「事業承継のすゝめ」 ~あなたの事業の継続のために~

    「事業承継のすゝめ」 ~あなたの事業の継続のために~

    1 はじめに
     福沢諭吉先生の「学問のすゝめ」の冒頭に「天は人の上に人を造らず人の下に人を造らず」という名言があります。
     今回は、「事業承継のすゝめ」と題して、中小企業における「社長の次の社長を造らず」問題について執筆しました。
     後継者が決定しており、事業承継の準備が万端整っている方は、読んでいただく必要はないかもしれません。
     しかし、代表者が60代以上であり、後継者(候補者を含む)が決まっていない会社の関係者(とくに社長)や、そのような会社とお付き合いのある方は、是非ご一読ください。
      
    2 休廃業や解散の増加
     全国で300数十万社あるとされる中小企業ですが、年間約5万社が休廃業や解散(以下、「休廃業等」といいます)を余儀なくされており、その数はここ数年増加傾向にあります。
     このままでは、数で日本企業の99パーセント以上を占め、雇用の約7割を支える中小企業の休廃業等の増加には歯止めがかからず、地域社会に貢献してきた伝統ある会社が減り続けてしまいます。

    3 社長の高齢化
     休廃業等増加の原因の一つとして考えられるのは、社長の高齢化です。全国の社長の平均年齢は2020年には60歳を超えています。中心年齢は60代後半です。
     そして、休廃業等した企業の代表者の年齢は、その構成比でみると、2020年には70代・80代で約6割を占めており、60代を含めると8割を超えます。
     このような数字から、社長の高齢化が進む中で事業承継ができずに休廃業等している現状が見て取れます。
     ところが、2019年の調査によれば、60代の社長のうち約半数が後継者不在であると回答しており、事業承継問題は焦眉の急といえます。

    4 事業承継には時間がかかる
     社長をなさっている方であれば、ご自身で体験していらっしゃると思いますが、経営者として事業を統括する能力を身につけるためには、一定以上の期間が必要です。
     今現在、後継者が決まっていない場合には、①後継者候補者の探索、②後継者候補者の意思確認や能力の見極め、③後継者候補者に対する教育・指導、④後継者に対する権限や株式の委譲、⑤対内的・対外的な告知、⑥前社長による一定期間の見守り等の段階を経て、ようやく事業承継が完了します。
     中小企業では、社長個人の財産が事業活動に使用されていることも多いため、その解決が問題となることも多くあります。また、社長の個人保証問題の処理もあるでしょう。
     このように事業承継には時間がかかるため、その準備期間には最低でも数年、理想的には10年程度を見込んでおいた方が良いのです。

    5 「第三者承継」という選択肢
     配偶者や子供、兄弟姉妹等の親族内で後継者候補者がいらっしゃるのであれば、早めに準備を始め、上記各段階を経て事業承継を進めてください。しかし、そのような後継者候補者が周りに見当たらない場合、「第三者承継」という有力な選択肢があります。
     「第三者承継」とは、文字通り、自社の役員や従業員を含む、親族でない「第三者」に事業を承継してもらう方式です。かつては、親族内承継が9割を超えておりましたが、近時は親族外承継の割合も3割以上に増加しており、全く珍しいことではありません。
     以後は、「第三者承継」を円滑に行う方法や注意点について述べていきます。

    6 何から始めるか
     日々、会社の運営に注力していると、ついつい事業承継の問題は先送りしがちです。
     また、「一生現役」という考え方もあるでしょう。しかし、自然人である人間は、誰しも必ず老いてゆき、いつか生命が尽きます。他方、法人である会社は、事業承継をうまく果たせば永続的に生き続けることができます。私としては、社長自身はもちろん家族や従業員、ひいては地域社会のためにも、ある時期に事業承継することをお勧めします。
     最初にすることは、事業承継の時系列的なプランをきちんと立てることです。例えば、「65歳で社長交代し、68歳まで会長職にとどまり、その後相談役となって70歳で会社から離れる」等です。
     皆様ご承知のとおり、計画通りに進められないことが多いのが世の常ですから、早めに余裕を持った計画を立てましょう。なお、頭の中で考えるだけではなく、紙に書いてみることが大切です。

    7 M&Aの活用
     休廃業等を考えていた社長が、第三者に会社を売却する事例が確実に増えています。いわゆるM&Aを活用した第三者承継事例です。
     株式譲渡や合併などが代表的ですが、事業譲渡や会社分割などの手法によることもあります。
     休廃業等をしただけでは、会社を失った上に、手元には何も残らないようなケースでも、事業自体の価値があれば、例えば何千万円かの譲渡代金を受領できてそれが社長の退職金代わりとなり、社員の雇用も守られる好結果になる場合があります。
     現実に、当事務所でもそのような事例に関与することがあります。倒れるまで走り続けるよりも、ある時、断腸の思いで会社を売却する方が正しいこともあるのです。
     
    8 サーチファンドの利用
     「サーチファンド」は、国内では最近の仕組みです。初耳の方も多いと思います。簡単にいうと、「次世代経営者を育てたい投資家」が、その能力を認めた「社長になりたい若者(=サーチャー)」に資金を出し、サーチャーが自分が経営したい企業をみつけて(=サーチ)、現企業オーナーとサーチャーが合意すると、投資家が企業を買収してサーチャーが社長となるものです。
     我が国では、まだまだ始まったばかりの仕組みですが、第三者承継を考えてはいるものの社長候補者に心当たりがない場合の選択肢の一つとして知っておきましょう。

    9 個人保証の問題解消手段
     中小企業では、経営者が個人保証をしている場合が多くみられます。この個人保証が事業承継の障害となる場合があります。
     その場合、「経営者保証に関するガイドライン」〈https://www.zenginkyo.or.jp/adr/sme/guideline/〉(以下、「ガイドライン」といいます)を利用して解決を図ることができます。
     ガイドラインには、一定の充足要件がありますが、要件を充足すれば個人保証の解除に金融機関が応じてくれます。事業承継時に焦点を当てたガイドラインの特則も定められており、2020年4月からは、中小企業庁による「事業承継時の経営者保証解除に向けた専門家による支援事業」も開始されています〈https://www.chusho.meti.go.jp/kinyu/hosyoukaijo/index.htm参照〉。
     ガイドラインの利用をご検討される場合、各種支援機関や弁護士に相談しましょう。

    10 様々な支援機関
     事業承継を進めるためには、会社の事業内容や資産状況について、現状や将来の見込みを把握しなければなりません。また、株主の状況や個人資産との混同がないか、個人保証の問題を解決できそうか等も検討しておかなければなりません。
     もし、身近に相談できる方がいない場合には、様々な支援機関を利用してみてください。
     事業承継に関する代表的な支援機関として、県内には「栃木県事業承継・引継ぎ支援センター」〈https://tochigi-hikitsugi.jp/gaiyou/〉があります。後継者対策など事業承継に悩む中小・小規模企業の相談窓口として、経済産業省が設置したもので、実務経験豊富な専門家が常駐し運営しています。無料で利用でき、秘密も厳守されます。
     また、「栃木県よろず支援拠点」〈https://tochigi-yorozu.com/〉でも無料・秘密で相談できます。
     他にも様々な支援機関がありますが、紙面の都合上、割愛します。一度、ネットで検索・閲覧されることをお勧めします。

    11 事業承継の支援施策
     事業承継問題は、国も力を入れており、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」が2008年に成立しています。生前贈与株式等を遺留分の対象から除外する特例や非上場株式等に係る相続税・贈与税猶予制度、金融支援などが盛り込まれています。
     また、2015年度の税制改正により、同年4月1日以後、初代経営者が存命中に2代目経営者が3代目経営者に対して再贈与を行う場合も、贈与税の納税義務が生じないこととされました。
     これらの支援施策は、内容が複雑でもあり、専門家の助言を経た上で利用することが必要と考えます。弁護士や税理士などの専門家や上記支援機関に相談するなどして、利用をご検討ください。

    12 最後に
     弁護士業をしていると、「社長の次の社長を造らず」に経営を続けてきた経営者から、休廃業等の相談を受けることがよくあります。
     「もっと早くから継続的に支援機関や専門家に相談していれば、選択肢も沢山あったのに・・・。」と考えられる事案が多く見られます。
     繰り返しますが、事業承継には時間がかかるのであり、うまく事業承継できれば会社は生き続けます。
     是非、今から事業承継の準備をしていただきたいと思います。あなたが心血を注いできた事業の継続のために。
    以 上