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    2022/08/02

    こんなところにも! 組織内弁護士のご紹介

    こんなところにも! 組織内弁護士のご紹介   

     「弁護士」と言われて、一番に思い浮かべるイメージは、法廷で「異議あり!」と述べている姿かもしれません。
     しかし、現在、弁護士の活動は裁判所や法律事務所のみにとどまらず、企業に所属する弁護士や、公務員になる弁護士も増加しており、活躍の場が広がっています。
     かくいう私も、平成30年4月から令和2年3月までの2年間、栃木県小山市役所に弁護士資格を持つ地方公務員として採用され、市役所に常勤で勤務していました。
     今回は、弁護士の活動の場が広がっていることや、私の市役所職員としての経験についてご紹介します。

    第1 広がっている組織内弁護士

    1 組織内弁護士とは
    組織内弁護士とは、官公署や企業等で役職員となっている弁護士をいいます。企業の役員や従業員として職務を行う弁護士は「企業内弁護士」、法律や条例に基づき国や地方公共団体に任期付きで採用された職員は「任期付公務員」と呼ばれています。
    2 企業で働く「企業内弁護士」
    (1)企業内弁護士数は、2011年には587人でしたが、2021年には2,820人となっており、10年で約4.8倍になっています。採用企業数でみると、2011年には326社でしたが、2021年には1,324社に拡大しています。
     なお、最新の統計(2021年6月現在)では、採用数が最も多いのがヤフーで42人、2番目が三井住友信託銀行で26人、3番目が野村證券で25人となっています(JILA(日本組織内弁護士協会)調べによる。)。
    (2)最新のアンケートでは、企業内弁護士の8割以上が法務・知的財産・コンプライアンス部門に所属しています。
    一方、勤務先の訴訟代理人となることがある、と答えたのは2割弱にとどまっています(JILA(日本組織内弁護士協会)調べによる。)。企業内弁護士の場合、所属している企業の訴訟代理人とはならない方が多数派となっています。
    3 公務員として働く「任期付公務員」
    (1)公務員として働く弁護士、任期付公務員は、2011年には86人でしたが、2021年には252人となっており、10年で約3倍になっています。
     内訳は、国の中央省庁等が147人、都道府県や市町村といった地方自治体が105人です。
     中央省庁では内閣官房や内閣府など多くの省庁に採用されており、国税庁には31人が採用されています。
    都道府県や市町村では多くの場合、採用は1名のみですが、大阪府茨木市では4名、愛知県名古屋市、愛知県春日井市、大阪府和泉市、兵庫県明石市、兵庫県伊丹市では各3名の弁護士が採用されています。
     なお、上記の数字は、弁護士登録をしている弁護士に限られており、司法試験に合格したものの弁護士としての登録をせず、又は、弁護士登録を抹消した法曹有資格者は含んでいません(日本弁護士連合会編著「弁護士白書2021年版」による。)。
    (2)任期付公務員の業務は、法律相談、規則・条例等の制定改廃、コンプライアンス担当、研修、訴訟等の対応、事故や苦情の対応、行政対象暴力や不当要求行為への対応など、多岐にわたっています(日本弁護士連合会ホームページによる。)。

    第2 任期付公務員としての経験について

     ここでは、私の栃木県小山市での任期付公務員としての経験についてご紹介します。
    1 募集・採用
    栃木県小山市では、平成30年度に弁護士資格を有する任期付公務員を1名採用するとのことで、平成29年5月ころから募集が開始されました。役職は「主幹」で課長~課長補佐級の扱いとされていました。
    採用の流れは、6月に履歴書と手書きのレポートを提出し、8月に面接試験を受けて、10月ころに採用の通知がありました。
    2 職務の原則
    地方公務員の職務の原則として、「全体の奉仕者」と、「原則兼業禁止」がありますので、ご紹介します。
    (1)全体の奉仕者
    ア 原則
    地方公務員法第30条は「すべて職員は、全体の奉仕者として公共の利益のために勤務し、且つ、職務の遂行に当っては、全力を挙げてこれに専念しなければならない。」としています。
    これは公職のあり方を示すもので、特定の人の利益のために働くのではなく、全体の利益のために働く、という理念を示しています。市役所は地域の住民が生活し、企業が活動する上で、なくてはならないサービスを提供するものですから、特定の者を利益に(又は不利益に)取り扱うことが許されない、という重要な理念です。
    イ 対応に苦慮した点
    一方で、ほんのごく一部ではありましたが、市民によるいわゆる迷惑行為等があった際、この理念もあって、地方自治体が対応に苦慮するケースがあったように個人的に感じました。
    例えば、特定の私人や私企業であれば、原則として、誰と契約をし、又は契約をしないかは自由です(契約自由の原則)。
    一方、地方自治体の場合、公務員は全体の奉仕者である上、地方自治体と市民との接点は、税金、各種証明書の交付、健康保険、各種の届出等、幅広くあります。このため、地方自治体が特定の人を名指しして、「この人とはやり取りをしない」という対応は基本的にできません。
    このため、以前に何度か迷惑行為を行った相手でも、市民の方が窓口を訪れた際は、まずは「どういったご用件でしょうか。」と尋ねることをスタート地点とする必要があります。こうした違いもあって、対応に難しい点があることを実感しました。
    (2)原則兼業禁止
    ア 原則
     地方公務員法では、職務専念義務(36条)、営利企業への従事等の制限(38条)という定めがあり、原則として兼職禁止です。
    イ 任期付公務員就任のハードル
    私の場合も、採用が決まってから、新規の案件は担当せず、担当していた案件は終わらせられるか、他の弁護士に引き継いでもらいました。例外的に、裁判所から任命されていた1件の案件のみは市長から個別の許可を得て継続しましたが、関わっていた全ての案件が手から離れた状態で、公務員に就任しました。
    この点は、弁護士が任期付公務員になる上でのハードルとなっていると感じます。
    3 担当した業務
    以下では、私が配属された部署、担当していた業務についてご紹介します。
    (1)配属
    平成30年4月、私は、小山市役所 総務部 行政経営課 法務係の係長に配属されました。通常の職員と同様、月曜日から金曜日、午前8時30分から午後5時15分までが定時の勤務時間で、小山市役所に常勤で勤務していました。
    法務係は、私のほかに3名の係員がおり、私は公務員経験ゼロにもかかわらず、いきなり部下が3名いることとなりました。結果的には、係員の皆さんが優秀で人柄も良かったため、どうにか職務をこなすことができました。
    (2)例規審査
    小山市が制定・改廃する条例・規則(「例規」と呼ばれます。)の全てについて、審査を行いました。年間200件以上の条例・規則の制定・改廃の審査に携わりました。
    特に、新しい制度(補助金など)を作ろうというときは、補助したい対象や補助の条件を、漏れなく、かつ、想定外の事態を避け、要件が曖昧とならないよう定める必要があります。正しい言い回しや表現、条件の設定等をするため、担当の部署と相談・協議をしながら調整していきました。
    この業務で、相当数の条文を目にして、一言一句をチェックしていたことで、誤字脱字を見つける能力が高まった実感があります。
    (3)法律相談・契約書チェック
    ア 法律相談
    法律相談は、本当に様々な相談があり、市役所の職務の広範公判さを実感しました。市民とのちょっとしたトラブルのほか、地方自治法、地方公務員法、市の条例・規則など、普段触れないルールに関する相談を多数受けました。道路法や災害対策基本法などの「公法」と呼ばれる分野の相談を受けることも多く、自身の視野や知識の幅が広がったと感じています。
    イ 契約書チェック
    契約書チェックについては、法律事務所で行っていた業務と共通する部分もありましたが、地方自治体ならでは、というものもありました。
    例えば、市が保有する公共施設などを民間の事業者等を指定して運営させる指定管理者制度や、契約に際しては競争入札を原則とするなど、地方自治体独自の定めがありました。
    (4)情報公開・個人情報保護
    情報公開請求や、個人情報保護条例に基づく自己情報の開示等についても担当をしていました。
    情報公開は、本来は市民に対する説明責任や市政の透明化を図るための仕組みです。こうした目的のためと思われる請求もありましたが、建設業者が過去の入札の情報を、地図業者が市の作成した地図情報に関連する情報を、公開請求するケースもあり、こういったものは本来の目的から外れているようにも感じました。
    情報公開請求があった場合、どの部分を、どのような理由で(一部)非開示とするか等を、過去の事例とも照らし合わせながら対応しました。
    個人情報保護に関しては、市が保有している自身の情報の開示を求めることができます。私が担当していたときは、年数件程度の請求があるのみで、活発に利用されてはいませんでした。
    (5)研修
    法務に関する研修、コンプライアンス研修等を行いました。
    地方自治体は、その公共的な立場もあって、不祥事があると大きく報道されます。
    職員は基本的に真面目ですが、数年程度で部署を異動する経験を繰り返すこともあって、「前任者から引き継いだこと」をそのまま続けてしまう傾向が見受けられました。この場合、引き継いだこと自体が間違っていた場合、又は時代に合わなくなった場合に十分対応できません。このため、コンプライアンス研修では「法律に基づく行政」という大原則から、元のルールに立ち返ることの重要性を強調するよう心掛けていました。
    (6)その他 -人事評価等、管理職としての職務
    上記(1)でも触れましたが、私は公務員経験ゼロであったにもかかわらず部下がいたため、人事評価等、管理職としての職務をしなければなりませんでした。この点は、弁護士としての本来的な業務とは別ではありますが、大変貴重な経験となりました。

    第3 最後に

    以上の通り、弁護士の活躍の場は広ってきており、今後、更に広がっていくことが見込まれます。
    今回は、私の経験と併せ、弁護士の少し違った一面をご紹介しました。