• インフォメーション
  • コラム
  • セミナー
  • 利用規約
  • プライバシーポリシー
  • サイトマップ
  • EN
  • トップ
  • ご挨拶
  • 業務内容
  • 弁護士等紹介
  • アクセス情報
  • 採用情報
  • お問合わせ
  • 海外展開支援コラム

    2023/02/16

    秘密保持契約を締結する必要性と注意すべきポイント

    はじめに

     企業にとって、営業や技術など事業活動で用いる情報は、秘密として扱うことで自社の競争力を高めることができます。そして、ひとたび秘密情報が社外に漏洩することとなれば、商品の研究開発の機会を失うことになったり、社会的な信用が失墜することで廃業に追い込まれることにもなりかねません。
     このように、企業にとって非常に重要な“秘密情報“を保護するための対策の一つとして、秘密保持契約の締結があげられることは、皆様もよくご存じかと思います。
     秘密保持契約は、あらゆるビジネスにおいて一般的に締結される契約であるため、“よく見る契約書”の一つであり、見慣れている方も多いかと思います。しかし、企業のリスク管理としては、重要な契約でもあるため、本稿では、秘密保持契約を締結する必要性や注意すべきポイントについて解説いたします。

    1 秘密保持契約とは

     秘密保持契約とは、契約の相手方に開示する自社の秘密情報について、一定の目的以外で使用することや、第三者に開示することを禁止するために締結する契約です。英語では、Non-Disclosure-Agreementといい、その頭文字をとって秘密保持契約のことをNDAと呼ぶことも一般的です。本稿においても、以下、秘密保持契約のことを、NDAといいます。

    2 NDAを締結する必要性

     まず、NDAを締結することにより、秘密情報の不正開示や不正使用の場合に相手方へ契約違反を理由として、損害賠償を請求することができます。そして、このようなペナルティを課すことで、秘密情報の受領側における適切な情報管理の徹底を促すことができます。
     また、NDAの対象となっている秘密情報が一定の要件を満たした場合、不正競争防止法(営業秘密保護)に基づき、発生した損害賠償に加えて、営業秘密の使用の差止めを請求することができます。
     不正競争防止法で保護される営業秘密に該当するためには、①営業秘密が「秘密として管理」されていること、②その営業秘密が企業の事業活動に有用であること、③その営業秘密が公然と知られていないことが必要となりますが(不正競争防止法2条1項6号)、NDAを締結していることは、要件①の秘密管理性があるとの判断に有利に働くこととなります。

    3 NDAを締結する場面毎の注意すべきポイント

    ⑴ M&Aを行う場合

     NDAを必ず締結する必要のある場面としては、まず、M&Aがあります。
     M&Aにおいて開示する企業の情報は、一般の商取引とは比べものにならないほど、膨大かつ重要な情報であるため、秘密情報を開示する前に、必ずNDAを締結する必要があります。
     情報の重要性に鑑み、NDAによって保護される秘密情報の範囲、開示される当事者の範囲、違反した場合のペナルティについては厳格に記載することが求められます。
     M&Aの手続が、最終契約に至った場合においては、最終契約書の中で改めて秘密保持条項が設けられることが一般的です。
      
     なお、M&Aの基本的な流れ等については、前回のニュースリリースで、新田弁護士が解説をしていますので、下記URLをご参照ください。
     中小企業のためのM&Aのイロハ|宇都宮中央法律事務所 (utsunomiya-law.com)


    ⑵ 取引先との業務提携の事前検討・交渉を行う場合

     複数の取引先からどこと契約を締結するか、まずは、互いに情報を共有して事前検討・交渉を行うことが必要なケースにおいては、情報を開示する前にNDAを締結することが一般的です。
     この場合、取引の内容によって、当事者双方が情報開示をするケースと一方当事者のみが情報開示するケースがあります。NDAを締結する場合には、どちらのケースであるのかを踏まえ、それに即したNDAであることを確認する必要があります。
     また、秘密情報を開示する目的も多種多様であることが多いため、「ABC商品開発に関する業務提携の検討のため」など目的の範囲はなるべく具体的に限定して記載するようにし、秘密情報の目的外使用を禁止する条項も設けるべきです。
     その他、基本契約書などではよくある有効期間についての「自動更新条項」を設けるべきではなく、1年間など、事前検討・交渉に必要な期間に限定した上で、必要に応じて当事者間の協議により延長できるようにしておきます。
      
    ⑶ 取引先と継続的な基本契約を締結する場合

     取引先と業務委託基本契約書、取引基本契約書等を締結する場合には、当該基本契約書の中に既に「秘密保持条項」が設けられていることが一般的です。
     このような場合、基本契約書とは別途、NDAを締結すべきなのか、悩まれることもあるかと思います。
     この点については、当該取引先との関係性や、開示又は開示される秘密情報の内容により異なりますが、継続的(長期的)な取引であることを踏まえれば、基本契約書とは別に、NDAを締結することがベターといえます。
     なぜなら、基本契約書にある「秘密保持条項」のみでは、一般的にNDAに記載されるべき条項が不足していることが多く、秘密情報の保護として不十分となる可能性があるからです。
     このような観点からは、既に基本契約書等を締結済みの取引先であっても、秘密保持条項が不十分であると考えられる場合には、更新契約書を作成する際などに、併せてNDAを締結することも有用です。この場合、NDA締結前に開示した秘密情報についても、秘密情報として取り扱うなどと定めておくとよいでしょう。

    ⑷ 役員や従業員と締結する場合

     NDAというと取引先と締結するイメージが強いかと思います。
     しかし、独立行政法人情報処理推進機構が実施した調査によれば、企業の情報漏洩は、中途退職者による漏洩(36.3%)が最も多く、次いで、現職従業員等の誤操作・誤認等による漏洩(21.2%)となっており(※)、企業として内部の役職員との間でNDAを締結する必要性は高いといえます。
       
     企業の役員は、会社法及び委任契約上、従業員については、雇用契約上、当然に会社に対して、守秘義務を負うこととなります。
     しかし、役員や従業員(とりわけ、研究者や技術者など)に対し、秘密情報の重要性を認識してもらい、取扱いに十分留意してもらうという意味において、NDAを締結しておくことは重要です。
     この場合、何が秘密情報に該当するのか、秘密の管理はどのように行うのか等について決めておき、役員や従業員に対して、具体的な秘密情報についての法的義務が発生するようにすることが大切です。

     役員や従業員とNDAを締結するタイミングとしては、一般に、入社時、プロジェクトの開始・参加時、退社時があげられます。その他、副業を認めている企業においては、副業開始時などに締結することも考えられます。
     NDAの締結まで、役員や従業員に要求することが難しく、現実的でないという場合には、最低限「秘密保持誓約書」に署名して提出させることも有用です。 
     
    ※独立行政法人情報処理推進機構「企業における営業秘密管理に関する実態調査2020調査実施報告書」28頁より引用

    4 NDAの締結にあたって注意すべきポイント

    ⑴ 秘密情報の定義の確認

     NDAには、一般的に、秘密情報の定義が記載されています。
     自社が相手方に開示する予定の秘密情報が、NDAに記載される秘密情報の定義にあてはまっているか、特に、秘密である旨明記しておかなければ秘密情報と扱われないと定義されている場合には、秘密情報と明記して開示するなど運用には十分注意しましょう。
     同様に、自社が相手方から開示を受ける秘密情報についても、開示を受けた後、自社において適切に管理すべき秘密情報がどこまでか、その範囲を正確に把握しておきましょう。
       
     ⑵ 秘密情報を開示できる第三者の有無・範囲

     NDAにおいては、秘密情報は、原則として第三者に開示することはできないものとされていますが、例外として開示が許容される第三者の有無・範囲についても規定されていることが一般的です。
     特に、NDAの当事者は、「会社」であり、親会社や子会社その他関連会社の役員や従業員は「第三者」に該当するため、例外として開示が許容されているか、確認しておく必要があります。
     また、秘密情報の漏洩を防ぐ観点からは、自社の秘密情報や相手方から受領した秘密情報について、会社内で誰でも見られる状態にはしないよう十分留意する必要もあります。

     ⑶ 秘密情報を開示する場合等の記録

     NDAを締結後、相手方が契約に違反して情報を漏洩した場合には、相手方に損害賠償を請求できます。
     しかし、この場合には、損害賠償を請求する側が、相手方が契約に違反したことを立証する必要があるため、重要な秘密情報を相手方に開示する場合には、いつ、誰に、どのように秘密情報を開示したか、記録に残しておくことが重要です。
     また、NDAの有効期間が終了した場合には、重要な秘密情報については返還・破棄してもらうことも忘れずに行うようにしましょう。同様に、開示を受けた秘密情報がある場合には、返還・破棄した上で、その旨記録しておくことも大切です。

    5 まとめ

     以上のとおり、NDAを締結する必要性や注意すべきポイントなどについて解説しましたが、一番重要なことは、秘密情報の内容や取扱い、取引の内容など個別具体的な事情を踏まえ、実情に即したNDAを締結し、正しく運用していくことです。
     NDAを締結する必要が生じた場合に悩まれた際などは、ぜひ当事務所にご相談ください。