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    2023/02/16

    令和5年4月から施行される改正労働基準法等のご紹介

    はじめに

     令和5年4月から、改正された労働基準法等が施行され、①中小企業において月60時間を超える時間外労働の割増賃金率が引き上げられるほか、②給与を電子マネー等で支払うことができるようになります。
     今回は、令和5年4月から変わる労働基準法等について、ご紹介します。

    第1 ①中小企業において月60時間超の時間外労働の割増賃金率が引き上げられます

    1 そもそも割増賃金とは
     使用者が、労働者に対し、(1)労働時間を延長して時間外労働をさせた場合、(2)休日労働をさせた場合、(3)深夜の時間帯に労働をさせた場合、労基法の定めにより、通常の賃金に一定の割増率を乗じた割増賃金を支払わなければなりません。
     これは、労働者に対する補償と長時間労働等の抑制という目的があります。

    2 どのような場合に、いくらの割増賃金を支払うか
    (1)時間外労働に対する割増賃金
    ア 時間外労働とは
     時間外労働とは、1日又は1週の法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)を超える労働をいいます。
     1日8時間を超える労働が時間外労働になることは聞き馴染みがあると思いますが、1週間で40時間を超える労働が時間外労働となることは見落とされることがあります。
     例えば、労働者が月曜日から土曜日まで(週6日)、毎日8時間働いた場合、1日8時間を超えて働いた日はありませんが、週合計の労働時間は48時間となるので、土曜日の8時間の労働は、原則として全て時間外割増賃金の対象となります。
    イ 時間外労働の割増率
     時間外労働の割増率は25%です(月60時間を超えた場合の割増率は後述します。また、法令上は「25%以上」とされていますが、「以上」の表記は省略しています。以下同じ。)。
    基本給などの予め決められた給与は、通常、所定の労働時間に対する給与ですので、時間外労働をした場合、「時間外労働をしたことによる給与」と、これに「25%の割増率を加えた手当」を支払うべきことになります。
     例えば、基本給等から算定した1時間当たりの給与(以下「時給」といいます。)が1500円の労働者が、1時間の時間外労働をした場合、基本給とは別に、時給1500円に25%分の375円を加えた1875円(計125%分)を支払う必要があります。
    (2)休日労働に対する割増賃金
    ア 休日労働とは
     休日労働とは、週1日の法定休日における労働をいいます。週休2日制の場合の1日の休日や、週休日でない祝日(法定外休日)に労働をしても、休日労働には当たりません。
    イ 休日労働の割増率
     休日労働の割増率は35%です。休日労働をした場合、基本給とは別に、1時間当たり、時給+35%の賃金を支払う必要があることは、時間外労働の場合と同様です。
    (3)深夜労働に対する割増賃金
    ア 深夜労働とは
     深夜労働とは、深夜(午後10時から午前5時までの間)における労働をいいます。
    イ 深夜労働の割増率
     深夜労働の割増率は25%です。
     例えば、時給1500円の労働者が午後5時から午前1時まで働いた場合、午後10時から午前1時までの労働に対しては、1時間当たり375円(25%)の深夜割増賃金を付加した1875円を支払う必要があります。
    (4)時間外・休日・深夜労働が重なる場合
     時間外労働が深夜労働と重なる場合は、重なる部分について割増率が50%(25%+25%)、休日労働と深夜労働が重なる場合は、重なる部分について割増率は60%(35%+25%)となります。
     一方、休日労働の時間が8時間を超えても、休日労働には時間外労働の規制が適用されないため、8時間を超える休日労働も35%の割増率となります。
    (5)時効について
     割増賃金の消滅時効期間は、以前は2年とされていましたが、令和2年4月に民法が改正された際に3年となりました。
     未払の割増賃金がある場合、以前の1.5倍の期間が請求の対象となります。
     なお、この消滅時効期間は、当分の間、3年とされており、時期は未定ですが将来的には5年となる見込みです。

    3 月60時間を超える時間外労働の割増賃金について
    (1)大企業には平成22年から適用
     大企業においては、平成22年4月から、1か月60時間を超える時間外労働の割増率が50%とされてきました。
     これは、ライフワークバランスを進める政策の一環で、特に長い時間外労働を抑制する、という目的で定められたもので、中小企業は、当分の間、適用除外とされてきました。
    ここでいう「中小企業」とは、①資本金3億円(小売業・サービス業は5000万円、卸売業は1億円)以下、又は、②常時使用する労働者数300人以下(小売業は50人以下、サービス・卸売業は100人以下)の事業主とされています。
    (2)令和5年4月から、中小企業にも適用されます
     その後、平成30年に働き方改革を推進する法改正の一環で、上記(1)の中小企業を適用除外とする規定が、令和5年4月1日をもって削除されることになりました。
     このため、企業の規模に関係なく、令和5年4月1日から、1か月60時間を超える時間外労働の割増率は50%となります。

    4 会社側の対応
    (1)実態の把握
     令和5年4月までに行うべきことの第一は、実態の把握です。1か月60時間超の時間外労働をしている労働者の有無、人数、超過時間数等を把握する必要があります。
    (2)就業規則等の確認・見直し 
     次に、就業規則や賃金規定の確認が必要です。
     多くの会社で、時間外労働の割増賃金について、特に限定なしに「25%」と定めていることが多いと思われます。
     この規定については、1か月60時間以下の時間外労働の割増率は25%、1か月60時間超の時間外労働の割増率が50%、と場合分けするなどの改正をする必要があります。
    (3)割増賃金計算方法等の確認・見直し
     さらに、令和5年4月以降、労働者が月60時間超の時間外労働をした場合には、法令のとおり割増賃金を支払う必要がありますので、労働時間の管理、割増賃金の計算方法等についても確認の上、必要に応じて見直す必要があります。

    第2 ②給与を電子マネー等で支払うことができるようになります

    1 これまでの法令の定め
    (1)給与支払いの原則
     給与(賃金)は、労基法上、通貨で、労働者に直接、全額を支払わなければならない、という原則があります。
     労基法の原則では、給与は現金で支払うこととなっています。
    (2)口座振込による支払い
     しかし、給与の現金払いは、広く、口座振り込みにより行われており、現金払いは実態とあまりにかけ離れています。
     労基法施行規則では、労働者の同意を得て、労働者が指定する金融機関の本人名義の口座に振り込むことを認めています。

    2 令和5年4月から電子マネー等での賃金支払いが認められます
     法改正後は、労働者の同意を得て、100万円相当額以下の送金のみを扱う第二種資金移動業を営む資金移動業者(スマホ決済アプリの「〇〇ペイ」等の多くが該当します。)の内、令和5年4月1日以降に厚生労働省の指定を受けた業者に支払うことで、賃金支払ができるようになります。
     労働者から得る同意書例は、厚生労働省の通達で示されています(令和4年11月28日基発1128号第4号「賃金の口座振込等について」別紙。URL:https://www.mhlw.go.jp/hourei/doc/tsuchi/T221129K0030.pdf)。

    3 会社側の対応
     これは、賃金の支払方法の選択肢が増えるものですので、義務として対応しなければならない、というものではありません。
     会社側のメリットとしては、振込手数料の負担軽減や、口座開設のハードルが高いとされている外国人労働者等に給与を支払う際の利便性等が指摘されています。
     労働者側のニーズの有無等を把握の上、段階的に導入していく、などの対応が考えられます。

    第3 最後に

     今回は、令和5年4月から変わる労務関係についてご紹介しました。
    会社に適用される法令は、労務関係のみならず、毎年のように、場合によっては1年の内に複数回改正されることがあります。
     法改正の対応に悩まれた際は、弁護士等の専門家にご相談ください。