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    2023/04/20

    「所有者不明土地」に関連する法整備について

    1 はじめに

    今回は、いわゆる「所有者不明土地」に関連する民法等の一部改正法(令和5年4月1日施行)と、相続土地国庫帰属法(令和5年4月27日施行)について情報提供致します。

    2 「所有者不明土地」とは

    ⑴ 「所有者不明土地」とは、①不動産登記簿により所有者が直ちに判明しない土地や、②所有者が判明しても、その所在が不明で連絡がつかない土地のことを指します。

    ⑵ このような所有者不明土地は、公共事業、復旧・復興事業、民間取引などの場面で、土地の利用を阻害しており、これが大きな問題となっています。
     令和2年の国交省の調査によれば、所有者不明土地の割合は、実に24パーセントにもなります。そして、所有者不明の原因は、相続登記の未了が63パーセント、住所変更登記の未了が33パーセントであるとされています。

    ⑶ 所有者不明土地では、十分な管理がなされず、荒れた状態のままとされることも多く、時には倒木や崖崩れなどの危険を生じさせたり、土地上に廃棄物が放置されて環境上の問題を生じることもあります。しかし、そのような土地をきちんと管理するための法整備は十分ではありませんでした。

    3 主な法整備の内容

    ⑴ 不動産登記制度の見直し
      不動産登記法が改正され、相続登記・住所変更登記の申請が義務化され、同時にそれらの登記手続が簡素化・合理化されました。

    ⑵ 土地を手放すための制度(相続土地国庫帰属制度)の創設 
      相続土地国庫帰属法により、相続等により土地の所有権を取得した者が、法務大臣の承認を受けてその土地の所有権を国庫に帰属させることができる制度が創設されました。

    ⑶ 土地・建物等の利用に関する民法の規律の見直し
      今回の民法改正の項目は多岐にわたります。隣地使用権の明確化、共有物の変更・管理に関する見直し、所有者不明土地・建物管理制度等の創設、長期間経過後の遺産分割の見直し等です。

    4 相続登記の申請の義務化について

     これまでは、相続登記の申請は義務ではありませんでした。そのため、特に相続をした土地の価値が乏しく、売却も困難であるような場合には、費用や労力をかけてまで相続登記の申請をすることなく、そのまま被相続人名義のまま放置されていることが良くあります。
     そして、年月の経過により、法定相続人の数が増大し、相続人調査をすると数十人になっているような案件は珍しくありません。このような場合、不動産の処分は、さらにハードルが高くなり、どんどん所有者不明土地が増えてしまうのです。
     今回の不動産登記法改正で、不動産を取得した相続人に対し、その取得を知った日から3年以内に相続登記の申請をすることが義務づけられました(令和6年4月1日施行)。もし、正当な理由がないのに申請を怠ると、10万円以下の過料の制裁に処されます。なお、この申請義務は、上記施行日より前に相続が発生していたケースについても、施行日から3年以内に履行することが求められておりますので、特に注意が必要です。
     他方、申請義務を簡易に履行できるように「相続人申告登記」という新たな登記手続が設けられました。これは、①所有権の登記名義人について相続が開始した旨と、②自らがその相続人である旨を3年以内に登記官に対して申し出ることで、申請義務を履行したものとみなす制度です。これによって、登記申請が容易になり、かつ、申出をした相続人の氏名・住所等が職権で登記に付記されるため、登記簿を見ることで相続人の所在を容易に把握することができます。

    5 相続土地国庫帰属制度について

     土地利用ニーズの低下等により、土地を相続したものの、土地を手放したいと考える方が増加しています。また、土地を望まずに相続で取得した所有者の負担感が増しており、管理の不全化を招いている現状があります。特に、地方の農村部における山林や田畑などは、その傾向が強いように思います。
     そこで、「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(相続土地国庫帰属法)が制定され、一定の要件を満たした場合には、相続又は遺贈により取得した土地を手放して、国庫に帰属させることができる制度が創設されました。
     これによって、相続等により取得した土地の継続所有を望まない方は、当該土地を国庫に帰属させ、土地の管理や固定資産税の負担を免れることができるようになりました。
     しかし、法務大臣(法務局)による要件審査があり、建物がある土地、担保権が設定されている土地、土壌汚染がある土地、危険な崖がある土地など、通常の管理又は処分をするに当たり過分の費用又は労力を要する土地は不可とされています。また、10年分の土地管理費相当額の負担金を納付することが必要とされております。
     よって、実際にこの制度を利用して、不要な土地を国庫に帰属させる案件がどの程度の数になるかは、現時点では不明と言わざるを得ないと考えます。

    6 土地・建物等の利用に関する民法の規律の見直しについて

    ⑴ 隣地使用権について定めた旧民法規定の内容が不明確であったため、どのような場合に隣地を使用できるかが明確に定められました。具体的には、①障壁、建物その他の工作物の築造、収去、修繕、②境界標の調査・境界に関する測量の場合などです。
      また、隣地使用に際しての通知に関するルールが整備されています。
      さらに、ガスや水道を引き込むなど各種ライフラインの設備の設置に関連する隣地等の使用権についても新たに規定されています。

    ⑵ 共有物の変更・管理についても見直されています。
      これまでは、共有物に変更を加える場合は、変更の内容にかかわらず、共有者全員の同意が必要とされておりましたが、砂利道をアスファルト塗装するなど、形状又は効用の著しい変更を伴わないもの(軽微変更)については、持ち分の過半数で決定することができるようになりました。
      また、共有物の管理について、共有物を使用している共有者がいる場合のルールや、管理方法等について賛否を明らかにしない共有者がいる場合に裁判所が関与して管理事項を決定する手続が新たに定められました。

    ⑶ 所有者不明土地・建物管理制度が創設されました。
      これまで所有者が不明の土地や建物の管理・処分が必要であるケースでは、不在者財産管理人、相続財産管理人、清算人(法人の場合)などの各財産管理制度が活用されてきました。
       しかし、これらの財産管理制度は、対象者の財産全般を管理する「人単位」の仕組みであることから、財産管理が非効率で、申立人等の利用者にとっても負担が大きいというデメリットがあります。
      そこで、特定の土地・建物のみに特化して管理を行う所有者不明土地管理制度及び所有者不明建物管理制度が創設されました。この制度を利用した場合、対象不動産の管理処分権は管理人に専属し、管理人は裁判所の許可を得て、対象不動産の処分(売却や建物取壊しなど)をすることができます。
      この制度は、所有者不明の不動産を活用するに当たっては、非常に有用であると思います。

    ⑷ その他にも、遺産分割に関して、相続開始時から10年を経過した後にする遺産分割は、原則として、具体的相続分ではなく、法定相続分(又は指定相続分)によることになるなど、いくつもの重要な改正がなされています。これらも所有者不明土地の解消に関連する改正です。

    7 まとめ

     いかがでしょうか。所有者不明土地の問題は、直ぐには解決しないものと予想されます。ようやく遅ればせながらも、解決に向けての一定の法整備がなされたという印象です。
     今回の法整備の内容は、法務省民事局が「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」として、まとめて説明しています(https://www.moj.go.jp/content/001377947.pdf)。
     法律や制度は、知らないと損をしてしまうことがあります。
     「確か、こんな改正があったな。」という程度でも頭に入れておくことは、有益だと思います。
     あなたの周りに所有者不明土地が出現した場合、相続の手続が必要となった場合などのために、頭の片隅に今回の情報をインプットしておいてください。