2023/07/20
ア 前記のとおり、ドライバー1人あたりの売上・利益が減少するおそれがあるため、これを維持・向上させるには、人材の確保が重要となります。
しかしながら、そもそも物流業界においては、長時間労働、低賃金などの労務管理上の問題が従前から指摘されており、人材不足が慢性化しています。
つまり、人材の確保という課題に対しては、ドライバーが働きやすい職場環境を整備することが重要といえます。
イ 基本給の底上げや、賞与の支給など給与体系の見直しはもちろんのこと、時短勤務制度の導入や育児休暇の取得、人材の育成やキャリアアップの仕組み構築など、これまでドライバーとしての採用が少なかった女性や高齢者でも働きやすい職場環境の整備に取り組む必要があります。
ア これまで日本の文化として、長時間労働が当たり前であり、かつ美化されるような風潮がありましたが、そのような時代は終わりました。
イ ドライバーの労働時間には運転だけではなく、積卸し場所での荷物の積み下ろし(荷役時間)やその待ち時間(荷待時間)も含まれ、これが長時間労働の要因の一つにもなっています。
ウ そこで、荷主会社と運送会社が連携して、荷待時間の削減(運行計画の遵守)や、荷役作業の効率化(荷役作業の機械化)など、時間当たりの生産性を高める取り組みが必要です。
エ また、輸送時間の短縮やドライバーの運転時間削減のために高速道路を有効活用した運行計画や、長距離輸送の場合には、運送会社同士が連携して中継輸送を取り入れたり、積み荷に余裕がある場合に荷主が協力し合い積み合わせて荷物を運ぶなどの新たな輸送方法も検討し、業務の効率化を図る必要があります。
ア 労働時間の短縮・効率化を図るためには、ITシステムを活用し業務効率を高めることも重要です。例えば、トラックの予約受付によって荷待時間を短縮できるほか、車両管理システムによってトラックの稼働率を向上させることができます。また、荷主会社と連携して、倉庫管理システムを使うことによって、過剰在庫や不足といった事態に陥りにくくなり、運送業務の無駄を省くこともできます。このように各種システムを導入することで、業務効率が高まるため、短い時間で売上を確保できるようになります。
イ また、最近では、AIで異業種の荷主をマッチングすることによる最適な配送計画の策定や、クラウドを活用した配車業務の標準化など、さまざまな取り組み事例が報告されています(公益社団法人日本トラック協会「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」)。
ウ さらに、IT導入による物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化には国も力を入れており(国土交通省「最近の物流政策について」)、今後もさまざまな業務改革が行われることが予想されます。
ア 2024年問題は物流業界だけでなく、一般消費者やその他の業界にも影響を及ぼすおそれがあるため、社会全体の問題として共通認識できるようにすることが大切です。そのため、SNSやホームページ、パンフレットなどの媒体を通して問題自体の浸透、問題に対する理解の浸透を図る必要があります。
イ 一般消費者の理解が進めば、ドライバーの職場環境の改善・促進や、荷主会社と連携した運送業務の効率化・運賃の適正化など、物流を持続可能なものとするための土壌を整えることができます。