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    2023/07/20

    「物流の2024年問題とは何か」 ~その具体的な影響から取り組むべき課題まで~

    1 2024年問題とは

    ⑴ 2024年問題とは、働き方改革関連法により、2024年4月以降、自動車運転業務の年間の時間外労働時間の上限が960時間までに規制されることによって生じる様々な問題のことをいいます。
     すでに、2023年4月からは、中小企業においても、月60時間を超える時間外労働に対する割増率が25%以上から50%以上に引き上げられたこととも相まって、人件費の増加への対応や、ドライバーの運行計画の見直しなど、物流業界では、大幅な労務管理の見直しが求められています。
    ⑵ なお、自動車運転業や建設業などの一部の業界以外では、2019年4月(中小企業では2020年4月)から、年間の時間外労働時間の上限規制が720時間に規制されるなど様々な規制がすでに適用されています。
     長時間労働が常態化している自動車運転業などの一部の業界については、特例として上限規制の適用が猶予されていましたが、いよいよ2024年4月からその猶予措置が終了することになります。

    2 2024年問題が物流業界に与える影響とは

    ⑴ 運送会社の売上・利益の減少

     時間外労働時間の上限規制によって、ドライバーの労働時間が減少してしまうため、その分ドライバー1人当たりの売上単価が減少し、会社全体の売上・利益が減少してしまうことになります。
     これにより、経営が困難となる運送会社が多数出てくる可能性があります。

    ⑵ ドライバーの収入減少・離職の可能性

     時間外労働時間の上限規制によって、これまで上限規制以上働いていたドライバーの割増賃金は減少し、また、走行距離の減少によって運行手当など含め給料が減少するおそれがあります。
     また、収入の減少によって離職するドライバーが増加するおそれもあり、人材不足の物流業界において更に拍車が掛かるおそれがあります。

    ⑶ 荷主会社の運賃値上げ

     運送会社の売上・利益の減少や、ドライバーの収入減少などをカバーするために、運送会社は運賃の値上げを検討せざるを得ない状況になりえます。
     運賃の値上げによって商品への価格転嫁がなされ、消費者の負担増も避けられません。
     つまり、2024年問題は、物流業界だけの問題ではなく、物流が支える食品や生活用品、インフラなどの我々の日常生活においてもコスト増加が懸念される問題を抱えています。

    3 2024年問題に向けて物流業界全体が取り組むべき課題とは

    ⑴ 人材の確保(働きやすい職場環境の整備)

     ア 前記のとおり、ドライバー1人あたりの売上・利益が減少するおそれがあるため、これを維持・向上させるには、人材の確保が重要となります。
     しかしながら、そもそも物流業界においては、長時間労働、低賃金などの労務管理上の問題が従前から指摘されており、人材不足が慢性化しています。
     つまり、人材の確保という課題に対しては、ドライバーが働きやすい職場環境を整備することが重要といえます。

     イ 基本給の底上げや、賞与の支給など給与体系の見直しはもちろんのこと、時短勤務制度の導入や育児休暇の取得、人材の育成やキャリアアップの仕組み構築など、これまでドライバーとしての採用が少なかった女性や高齢者でも働きやすい職場環境の整備に取り組む必要があります。



    ⑵ 労働生産性の向上

     ア これまで日本の文化として、長時間労働が当たり前であり、かつ美化されるような風潮がありましたが、そのような時代は終わりました。

     イ ドライバーの労働時間には運転だけではなく、積卸し場所での荷物の積み下ろし(荷役時間)やその待ち時間(荷待時間)も含まれ、これが長時間労働の要因の一つにもなっています。

     ウ そこで、荷主会社と運送会社が連携して、荷待時間の削減(運行計画の遵守)や、荷役作業の効率化(荷役作業の機械化)など、時間当たりの生産性を高める取り組みが必要です。

     エ また、輸送時間の短縮やドライバーの運転時間削減のために高速道路を有効活用した運行計画や、長距離輸送の場合には、運送会社同士が連携して中継輸送を取り入れたり、積み荷に余裕がある場合に荷主が協力し合い積み合わせて荷物を運ぶなどの新たな輸送方法も検討し、業務の効率化を図る必要があります。



    ⑶ ITツールなどの導入・活用

     ア 労働時間の短縮・効率化を図るためには、ITシステムを活用し業務効率を高めることも重要です。例えば、トラックの予約受付によって荷待時間を短縮できるほか、車両管理システムによってトラックの稼働率を向上させることができます。また、荷主会社と連携して、倉庫管理システムを使うことによって、過剰在庫や不足といった事態に陥りにくくなり、運送業務の無駄を省くこともできます。このように各種システムを導入することで、業務効率が高まるため、短い時間で売上を確保できるようになります。

     イ また、最近では、AIで異業種の荷主をマッチングすることによる最適な配送計画の策定や、クラウドを活用した配車業務の標準化など、さまざまな取り組み事例が報告されています(公益社団法人日本トラック協会「トラック運送業界の働き方改革実現に向けたアクションプラン」)。

     ウ さらに、IT導入による物流業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)化には国も力を入れており(国土交通省「最近の物流政策について」)、今後もさまざまな業務改革が行われることが予想されます。

     

    ⑷ 一般消費者やその他業界への理解促進

     ア 2024年問題は物流業界だけでなく、一般消費者やその他の業界にも影響を及ぼすおそれがあるため、社会全体の問題として共通認識できるようにすることが大切です。そのため、SNSやホームページ、パンフレットなどの媒体を通して問題自体の浸透、問題に対する理解の浸透を図る必要があります。

     イ 一般消費者の理解が進めば、ドライバーの職場環境の改善・促進や、荷主会社と連携した運送業務の効率化・運賃の適正化など、物流を持続可能なものとするための土壌を整えることができます。


    4 最後に

     以上のとおり、2024年問題は、物流業界のみならず、一般消費者やその他の業界にも影響する重大かつ早急に対応すべき問題です。
     この問題に対応するためには、運送会社においては、ドライバーの労働時間の是正や給与体系の見直しなど、労働基準法をはじめとした労働関連法を踏まえた対策が必要になります。
     また、荷主会社においても、運賃や運送内容・条件面の見直しなど含め、運送会社との運送・物流委託契約書の見直しが必要となってきます。
     もっとも、各見直しには、働き方改革関連法を含め労働関連法の仕組みをよく理解する必要がありますので、自社の対応方針にお困りの方は、ぜひ弁護士などの専門家にご相談ください。