2024/12/12
① 従業員の月々の残業代や社会保険料、所得税等を逐一計算する労力が軽減される。
② 毎月の人件費を把握しやすくなるため、資金繰り計画を立てやすくなる。
③ 従業員としても、一定の残業代が支給されることにより、収入がより安定する。
④ 定時で帰っても既定の時間内で残業しても支払われる給与が同じであることから、テキパキと仕事をしようとする気運が高まり、業務効率が上がることが期待できる。
① 残業が発生しなくても固定残業代を支払わなければならない。
② 固定残業代の制度を導入していても、勤怠管理は行う必要があり、規定された固定残業時間を超える残業があったときには、超過分の残業代を算定して支払う必要がある。
③ 労務管理者が制度を誤解するなどして、正しく運用しないと、違法なサービス残業の発生につながりかねない。
④ 残業代を払っているのだから、残業させるのが当たり前だとの風潮を生む危険がある。
固定残業代の制度を採用すると、見かけの給与額を増大させることとなります。しかし、各都道府県ごとに決まっている最低賃金は、固定残業代を控除した基本給で計算しなければなりません。固定残業代を含めて計算することはできませんので、注意が必要です。
労働基準法においては、原則として、残業に対して25%以上の割増賃金を支払わなければなりません。固定残業代であっても、この割増率を満たしていない場合は違法です。
例えば、固定残業代を除いた基本給が1時間当たり1,200円の従業員に対して、月20時間分の固定残業代を支払う場合、残業代は1,200円×1.25×20時間=30,000円となります。これを下回ると違法となるのです。
上記デメリット②で記載したとおり、規定された固定残業時間を超える残業があったときには、超過分の残業代を算定して支払う必要があります。この支払を怠ると違法となります。
固定残業代が20時間分である場合、30時間残業したときは、超過した10時間分の残業代を支払わなくてはなりません。
まず、固定残業時間を適切に設定することです。あまり長時間に設定すると余計な人件費を無駄に支払うこととなります。反対に、短時間過ぎると結局超過分の残業代算定の労力削減につながりません。
普段の残業の平均時間を参考にして、適切に設定してください。もし、月毎の残業時間の長短があまりに激しいような場合には、固定残業代制度の導入には向かないと思われます。
なお、昨今、いわゆるライフワークバランスが重視されるようになっており、長時間の残業自体が問題視されることがありますので、ご注意ください。
固定残業代制度について、就業規則等に詳細なルールを定め、それを従業員に周知させることが必要です。
固定残業代が適用される固定残業時間が何時間であるのか、必ずはっきりとさせなければなりません。この点、従業員によって基本給は異なりますので、固定残業代も当然金額が異なります。算定方法は、給与規程などに定めておいてください。
また、給与明細には、基本給と峻別して固定残業代と残業時間を明記しておくことも大切です。
なお、就業規則や給与規程に単語(用語)の意味をきちんと定義しないまま、固定残業代を「管理手当」などの名称で支払うと、固定残業代と認められず、かつ、残業代の計算の際に当該「管理手当」を付加して残業代算定の基礎となる時間給が算定されてしまうこととなって、二重の意味で会社が損失を被ることがありますので、注意してください。
固定残業代の制度を導入しても、超過分の残業代は支払う必要があるため、制度導入後も勤怠管理を適切に行う必要があります。
そもそも使用者は、従業員の労働時間を適切に把握する法的義務があります。国が策定したガイドラインもありますので、必要に応じて参照してください。
労務管理者が誤った運用をしないように、教育・研修を行い、正しい運用をすることが肝要です。サービス残業が横行するようなことはあってはなりません。また、「固定残業代を払っているのだから、残業させるのが当たり前だ」という風潮を生まないように注意しましょう。