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    2022.10.19houmuGeneral Corporate Legal Services

    What to do if you receive a harassment consultation

    ハラスメント相談があった場合の対応

     職場でのハラスメントは、それ自体が不祥事であることは勿論、職場環境を悪化させ、生産性を低下させる要因となります。また、
    ネット上にその事実が掲載されたような場合には、企業の社会的評価を大きく低下させるリスクもあります。
     そのため、ハラスメントの予防に努める取り組みが必要であることは明らかで、相談窓口の設置や相談体制の整備などはもちろん
    重要です。
     ところが、実際にハラスメントの相談をしても「対応してもらえなかった。」、「対応が不十分だと感じた。」等の意見は、良く耳にすると
    ころです。
     そこで、本稿では、ハラスメントの相談を受けた場合の対応について、解説します。

    1 迅速な対応を心がけること

     相談者は、自身がハラスメントを受けたとして思い悩んだ末に、相談窓口に連絡しています。特に反復継続的なハラスメントの場
    合では、苦痛や我慢が限界に達していることも多く、相談者の心情を慮って、迅速な対応を心がけることが大切です。
     この点、電話や面談ではなく、メールや手紙などで相談があった場合にも、放置することがないように注意が必要です。相談を受け
    付けたこと、事情聴取や調査を行うこと等を早急に返信するべきです。仮に、客観的には緊急性がない事案であっても、相談者にとっ
    ては切羽詰まった問題だからです。

    2 相談者からの聞き取り時における注意点

    ⑴ 必要な確認事項
      ハラスメント相談を受け付けるにあたり、企業において確認しなければならない情報が欠落している場合があります。必要な基本
     的事項としては、以下のような事柄が挙げられます。
      ① 相談者の氏名・所属・連絡先等
        連絡先や連絡方法の確認を怠ると、その後の調査に支障が出る場合があります。
        なお、相談者が匿名を希望した場合については、後述します。
      ② ハラスメントの内容
        事実関係を5W1Hでできる限り特定してください。ハラスメントの加害者とされる行為者の発言内容が問題となる場合には、
       カギ括弧の付いたセリフの形で聞き取りをすることを心がけてください。
      ③ 相談者の要望
        職場環境の改善、行為者の懲戒処分など相談者本人の要望を具体的に聞き取ってください。相談者によっては、通報として受
       け付けてもらうことだけを希望する方もいるからです。
      ④ 調査結果や処分内容等の連絡の要否
        多くの相談者は、連絡を希望しますが、規程の内容によっては、相談者に報告をするかしないかは会社の裁量に委ねられるこ
       ともあります。なお、調査には一定の時間を要すること、必ずしも処分に至らない場合があることを説明しておくとベターです。

    ⑵ 相談者から「匿名にしてほしい」との要望があった場合

      相談者が「匿名」を希望するのであれば、企業はその希望を尊重すべきではあります。
      しかし、ハラスメントは通常、個人から個人に対して行われますので、ハラスメントの調査自体に個人特定の要素が強く、匿名性
     を担保した場合の調査には限界があります。
      よって、相談者が匿名を希望する場合には、漫然と匿名で受け付けて処理するのではなく、匿名の場合には調査が進まなくなる可
     能性があることを説明し、それでも匿名希望を維持するか確認するべきです。

    ⑶ 相談者が感情的になっており、聞き取りが長時間にわたる場合
     
      相談者が感情的になっている場合には、そのまま時間をかけて聴くよりも、一度仕切り直して考えを整理してもらったり、気持ちを
     切り替えて冷静になってもらう時間を設けることが必要です。
      この点、厚生労働省のマニュアルでは、1回の相談時間を長くても50分とすることが推奨されています。
      相談内容について、相談者自身にメモや文章でまとめてもらう方法が有用な場合もあります。

    ⑷ ハラスメントが原因の精神疾患で、現在休職中の相談者の場合

      この場合、①そもそも聞き取りを行うべきか、②行うとしてどのように行うべきかという問題があります。
      ①の点については、相談者本人や相談窓口担当者が独自に判断するのではなく、ヒアリング調査の是非について、主治医若しくは
     産業医の医学的知 見を参考に判断する必要があります。
      また、②の点については、相談者の希望を踏まえて、家族の同席を認めたり、聞き取り場所を相談者の自宅やその近所のホテルに
     する等、聞き取り方法についても、柔軟に対応すべきです。

    ⑸ およそ荒唐無稽に感じられる相談である場合

      相談内容によっては、およそ常識的にはあり得ず、事実無根であろうと思われる相談もあり得ます。
      この場合でも、最初から頭ごなしに否定することは良くありません。一旦は、相談内容を聞き取って、一応の調査を経て、結論を
     出すこととなります。

    3 行為者・関係者への調査

    ⑴ 行為者や関係者を調査する際の注意点

      調査を行う場所は会社内で基本的に問題ありません。もっとも、事業所によっては、会議室の使用が難しく調査を行おうとすると
     他の従業員等の目についてしまうこともあります。そのような場合には、貸し会議室を借りるなどして周囲に人がいない状況下でヒ
     アリングするようにしてください。
      また、ヒアリングする側の人数は、2~3名が望ましいです。ヒアリングをする者の人数が多過ぎると、行為者や関係者に圧迫感
     を与えてしまい、後日、供述内容の任意性を問題とされるおそれがあるからです。
      セクシャルハラスメントの事案では、二次被害防止の観点から、被害者本人や目撃者から聞き取りを行う場合、企業側の調査メン
     バーに少なくとも1名の同性担当者を入れるべきです。

    ⑵ 相談者が行為者から聞き取りして欲しくないと要望する場合
      
      相談者が不利益や報復を恐れて、行為者からの聞き取りに消極的な場合があります。
      このような場合には、相談者に対して、「あなたに不利益な扱いや、報復的な扱いはさせない。あなた以外にも被害者が生じない
     ように、会社として厳正に対応したいので、行為者へのヒアリングに了解してほしい。」などと説得しましょう。なお、調査の労力
     は増えますが、当該行為者だけではなく、部署の全員から聞き取りをすることで相談者の理解を得るやり方もあります。
     
    ⑶ 行為者がメンタル不調により会社を休んで、聞き取りが困難な場合

      相談者が休職している場合と同様、まずは主治医や産業医のから、行為者がヒアリング調査に耐えられる健康状態にあるかを確認
     します。その結果耐えられない場合には、健康状態が回復するのを待つのが基本的な対応です。無理に聞き取り調査をすると、後日
     その際の供述の任意性を争われるという問題が生じますので、避けるべきです。
      もっとも、諸般の事情により、急いで事実関係を確認する必要がある場合には、書面によるヒアリング(質問事項を列挙した書面を
     送付し、書面で回答させる方法)を検討することも有用です。

    ⑷ 記録する際の留意点

      聞き取り調査時の記録を基に、懲戒処分を行うこともありますので、記録の仕方は重要です。   
      基本的なことではありますが、相談者からの聞き取り時と同様、5WIHを意識してヒアリングをします。そして、記録の際には
     評価を伴う表現ではなく、具体的な言動等の事実を記載するように留意する必要があります。
      また、行為者が認めている部分と認めていない部分が混在しないように、できる限り判別できるように分けて記録すること、及び
     ヒアリング担当者や記録作成者の個人的な感想や考えが入り込まないように記録することが重要です。
      事実関係を記録することが重要であることを意識して、記録の作成を行うように心がけてください。

    4 事実認定と評価、そして処分

    ⑴ 事実認定
       
      相談者と行為者の双方の言い分が合致している場合には、事実認定は容易です。しかし、実際には、双方の言い分は食い違う場合
     が多く、どのような事実を認定するかは困難を伴うものです。
      皆さんは、裁判官ではありませんから、日常的に事実認定を行っているわけではありません。録画・録音データや第三者の目撃証
     言な どがなく、事実認定に困る場合には、弁護士等外部の専門家の意見を徴して事実認定することがベターです。
      この点、誤った事実認定を基にして、行為者に対して懲戒処分を行ったようなときには、損害賠償の問題も生じ得ますので、注意
     してください。

    ⑵ 事実の評価

      事実を認定したら、次に、それを評価します。具体的には、就業規則に違反して何らかの処分が必要か、処分が必要である場合に
     は、どのような処分が適切かを検討することとなります。
      例えば、身体的接触を伴うセクシャルハラスメントがあったとして、その内容が「女性に後ろから抱きついて、胸を強く掴んだ。」
     というものであった場合には、強制わいせつ罪も成立する重大な就業規則違反と評価されます。他方、身体的接触はないが、性的な
     不適切発言をしたような場合には、発言の内容によってですが、違反の程度は軽微であると評価されることもあるでしょう。
      評価も難しいものです。判決例でも、同じ事実認定でその評価が分かれることは良くあります。事実認定と同様、外部の専門家の
     意見を徴することも有用です。

    ⑶ 処分

      処分が必要な違反行為であると評価した場合には、行為者を処分します。なお、懲戒処分に は該当しない口頭注意処分のような
     ものでも、広い意味では「処分」ですので注意してください。
      処分内容は、当該違反行為の軽重に応じたものでなければいけません。そのため、企業によっては、予め違反行為の類型や程度ご
     とに処分内容を決定している場合もあります。
      処分を決定する際、行為と処分のバランスに配慮することは勿論ですが、処分決定までのプロセスも大切です。コンプライアンス
     委員会などの組織があれば良いですが、もし無い場合でも、担当取締役や当該部署の責任者などを含めた複数名で合議して決定する
     ようにしましょう。
      なお、処分内容は、会社の規程に照らし、当該事案の必要に応じて、相談者にも報告することがあります。

    5 最後に

     ハラスメント予防のための教育・啓発や、相談体制の整備は、もはや現代的な経営には必須といえます。そして、相談窓口に相談が
    あった場合も、きちんと対応しなければなりません。
     各種の相談を伺っていると、ハラスメントの相談を受けた際の対応で失敗しているケースも経験します。
     貴社でも本稿を参考にして、対応をご準備頂ければと思います。
     なお、ハラスメント事案が発生した場合には、再発防止策もお忘れなく。最後までお読みくださいまして、ありがとうございました。